リヨンから南西に向かって車で1時間くらい行くと、ピラ自然公園の山の中に Sainte Croix en Jarez (サントクロワ・アン・ジャレ)という村がある。
ちょうどローヌ県からロワール県に入ってすぐのあたり。
フランスで最も美しい村にも登録されているこの村は普通の村とは違った特殊な成り立ちで知られ、美しい村シリーズの中でも変わり種と言える。
Sainte Croix en Jarez の特殊な成り立ちとは?

14世紀に、シャルトルーズ会(カルトジオ会)のグループがピラ山地の谷あいに住み着いて修道院を建てた。
さすが、やたらと山奥に修道院を建てて沈黙を課題に各自が個室で祈りや黙想にいそしむこのカルトジオ会。ここも例にもれず祈りが捗りそうな立地です。周辺を自転車で走り回ってみたけど、この村を遠くから眺められる場所も少ない。
こうして修道士たちが黙々とここで祈り、途中で改装工事などを経て数百年が過ぎた。
18世紀の末にフランス革命が起き、革命政府は修道士を追い出し修道院を接収。数十軒の住宅に分けて売り出されて近隣の一般人が移り住み、村となった。
カルトジオ会と言えばシャルトルーズ (Chartreuse) ?
ところで、この修道会って緑のリキュール作ってなかった?ってアナタ…その通りです。約130種類もの植物でできたシャルトルーズというリキュールは、このカルトジオ会秘伝の長寿の薬。17世紀頃から作られている。
130種類の植物と言っても、庭やそのへんに生えてる草を適当にむしってきたんじゃないよ。数が多すぎて、周りにあるあらゆる草を混ぜてみたのかと思いたくなるけどね。
一般にはその130種類の詳細は分かっていない。材料、配分とも修道会の門外不出のレシピがある。
修道会の中でもレシピを知る人はいつの時代もほんの数名という徹底した秘伝っぷり。
じゃ、カルトジオ会の修道士って、辺鄙な場所にこもってこっそり吞んだくれてたの?いえいえ、べつに修道士たちが「これは長寿の薬だから…」などと言い訳しながら日々呑んだくれていたわけではないわ。
この薬草成分たっぷりの長寿の秘薬を収入源にしていたというのが正解だそう。
ちなみにここ Sainte Croix en Jarez ではシャルトルーズは作っていなかった様子。
でも、そういう団体の修道士がここに住んでいたというわけです。なのでシャルトルーズはここのお土産で一応買えるよ。
Sainte Croix en Jarez の村はどんな感じ?
村とはいえ、もとは一施設なので、簡単に言うと2つの中庭を囲むように住宅が並んでいる。
村の中にアクセスできる場所はそれぞれの中庭に面して2か所。立派な正門側から行ってみよう。

門をくぐると、一つ目の中庭 Cour des Frères。中庭を囲んで並ぶ家には今も普通に人が住んでいる。
その先に二つ目の中庭 Cour des Pères。この二つの中庭を一本の通路がつないでいる。
この通路からアクセスできる教会のフレスコ画に14世紀当時の名残が見られる。
美しい村なんだけど中庭に建物が建っているだけなので、中は案外あっさりした風貌。
そして、二つ目の中庭と村の外をつなぐ小さな門がこちら。
外から見た姿の方が「あの門の中ってどうなってるんだろう?」ってそそられるかも?
この村にリヨンなどから直接アクセスできる方法は車だけなのが残念?
ま、(元)カルトジオ会の修道院ならではの立地ということでよろしくね。