さて、一方通行を高速バックで逆走してきた車に交差点の真ん中で当て逃げされたあと、こわれた車を邪魔にならない場所まで移動させたところで、気が動転している相方はとりあえず休ませ(冷却させ?)、相方に代わって次のステップに進むことにした。

保険のアシスタンスサービスに電話をする

保険会社のアシスタンスサービスに電話をして、事故に遭って車を運行できなくなったのでレッカー業者の手配をお願いし、車の登録番号と今いる場所(リヨン〇区の○○通りと※※通りの交差点、など)を伝える。

我が家で加入していた自動車保険のアシスタンスサービスでは、事故時に本来予定されていた外出を続けるためのレンタカーや代替の交通手段の手配費用は「オプション」で、当時はそのオプションを付けていなかったので、代車は車の修理業者が決まったら、修理期間中に修理工場で貸してもらえる代車しか借りれない模様。修理業者が決まるまで、車無しか…残念。

また、たとえば「アシスタンス 0km」ではなく免責となる距離が設定されている場合は、今回のような家のそばの事故では対応してもらえなかったりします。

というわけで自動車保険に加入する際にアシスタンスサービスは付けておいた方が確実に便利ですが、そのアシスタンスサービスの内容もよく確認して吟味したほうが良いですよ。

業者が手配出来たらSMSで事故受付番号やレッカー業者情報や到着予定時刻などが送られてきた。45分後か…。こうして、レッカーが来るのを待つことになるが、このあと事態が少し変わってくる。

当て逃げ犯が現場に戻ってくる

前の記事で、事故現場で手慣れた様子で交通整理をしていたジャージ姿の女性は、じつは近所に住んでいる非番の警察官でした。

そりゃ、慣れてるわけだ。警察章をかざしながら現場に現れた様子は、まさに刑事ドラマ(または水戸黄門?) !! 初めて生で見た…。本当にあれ、やるんだ?

このあと長時間にわたりこの女性がずっと世話を焼いてくれた。

もう一人別の女性が近づいてきた。この女性は当て逃げしていった「腰パン(仮名)」の家族(事故の時彼女もそばにいた)で、本人から電話が来ているという。どうも「腰パン」はうちの相方が怖くて逃走したらしい。いやいや、ま、ひげが伸び気味のヴァイキングのおっさんみたいな人(?)が絶叫しながら車から飛び出てきたから、たしかにびっくりしたかもしれないけどさ笑、腰ぬけじゃん、そりゃパンツもずり落ちるわ笑。

そこで、非番の警察官が電話で説得を始める。「おとなしく戻ってきて Constat amiable を交わした方が、警察に介入されるよりも、あなたにとっても簡単なのよ」と(この女性は非番なので今のところ「警察の介入」にはならない)。

電話の向こうで何やらごねてる様子。

さらに「今戻ってこなかったら、今度は明日の朝に署への出頭命令が来るし、それで出頭しなかったら家までお迎えが来たりして余計に面倒なことになりますよ。今戻ってきたら、あとは保険会社に書類を送って終わる話なんだから」とたたみかける。

一方、反対側で「もういい、警察行く」とぶつぶつ相方が文句を言っている。

私も「いやいや、警察が介入すると警察からのレポートで過失割合0 が確定するまで(オールリスクの)免責額を立て替えさせられたりして面倒だよ。あれ、結構時間もかかるし、「腰パン」が戻ってくるならその方がぜったい楽だよ」と相方を説得。

こうして、「腰パン」が戻ってくることになった。40分ほどで着くとのこと。レッカーと腰パンが来るのを待つ間に、非番の警察官がCONSTAT AMIABLEの記入を始めた。

CONSTAT AMIABLE って何だ?

Constat automobile
本物はここに出せないので、実際の内容をもとに再現してみた。

コンスタ・アミアブル。単に「コンスタ」とだけ言う場合も多いです。日本語だと「合意調書」とかになるのかな?

フランスやほかのヨーロッパの国では、一般的な車対車の事故の場合、当事者どうしでこの2枚複写の用紙を記入してから1枚ずつ取り、それぞれの保険会社に事故報告として送ります。同じシステムの国ではこの用紙も青と黄色の同じデザインで、たとえばドイツならドイツ語で同じことが書かれています。

どういう感じの書類なのかはここに詳しく書くと長くなるので、いつか別の記事にまとめたいと思います。

簡単に言うと、お互いのドライバー情報、車両情報、保険情報と事故の状況(図解付きで)、損害内容を記入して合意のサインをする用紙です。

つまり、①日時 ②場所 ③何が起きたか ④損害の内容 ⑤サイン を両者の合意によりまとめた調書となります。

保険会社間の協定により、基本的にはこのCONSTAT AMIABLEに書いてある内容(のみ)をもとに過失割合が判断され、保険金の支払いと加害者の保険会社への請求が行われて終了。過失割合は、100%と0%と50%しかないので、シンプルです(これだけ見ても、警察が介入しない方が楽なのがわかる?)。

ただし逆に言うと、CONSTAT AMIABLEの記載内容がすごく重要ということになります。

気が動転していて大変かもしれませんが、記入するときは落ち着いて慎重に記入しましょう。

もちろん事故によっては微妙な状況で相手と言い分が一致しない場合もあります。相手と言い分が合わない場合はサインをしてはいけません。自分のバージョンを別途作成し、そちらにサインを入れて保険会社に送りましょう。

また、こちらが外国人だと、わからないだろうと思って「書いてあげるよ。サインだけよろしく」などと言って相手が書いてくれるケースもあるかもしれませんが、内容がわからないのにサインなんてもってのほかです(内容をよく見て、同意できる内容であれば良いですが)。

本当は悪くないのにこの書類の書き方を間違えていたせいで責任事故にされてしまった案件を何度も見たことがあります。特にサインが入ってしまっていると、お気の毒だけど保険会社側はどうにもできないのですよ…。


ということで、CONSTAT AMIABLEの用紙にこちら側の名前や車両情報などを書き込んでいる間にレッカーが到着した。

レッカーが出発した直後に「腰パン」が再登場し、腰パン情報が用紙に追加され、いよいよ重要な事故状況欄の記入が始まる。

私も、今回はこちらの過失はゼロなんだけど、私も思考能力が落ちてるし、くだらないところで書き方が悪くて50%になったら大変だと思って、用紙をじーーーーーっと見つめていたんだけど、非番の警察官のおかげできちんとコンスタが完成した。

こうして車も運ばれていき、コンスタも書き終わったので解散となった。おなかすいた…。時刻は9時前くらいだったかな?

車も無いしもう疲れたのでサヴォワ行きをあきらめかけていたんだけど、結局、10時過ぎの終電に間に合いそうだし、義母が駅まで迎えに来てくれるということなので、急いでファーストフードでお腹を満たし、リヨン・パールデュー駅からサヴォワ方面行の終電に乗り込んだ。

どうせ週末はもう何もする気力がないんだから、家で何もしないよりはサヴォワの自然の中を自転車で走ったほうが気分転換になるなのではないかという結論に至ったからね。

事故処理の経験者とはいえ、いざ自分が当事者となるとぼーっとして頭が働かなくなりますね…。手伝ってくれただけでなく、「落ち着くように何か飲む?」などと色々世話を焼いてくれたこの非番の警察官には本当に感謝の言葉しかないです(すべて終わった頃、報告とお礼に行きました)。

彼女といい、当て逃げ犯を追いかけてくれたバイクの人といい、証人を申し出てくれた人といい、近所に親切な人がたくさんいたことが不幸中の幸いでした。

次回はこのCONSTAT AMIABLEを保険会社に送ってから、車が修理されて戻ってくるまでの話をします。お楽しみに。

前の記事【フランスで運転】当て逃げされた?さてどうする?
次の記事【フランスで運転】保険会社への事故報告から車の修理まで