Chalets & Alpes

夫がスポーツで怪我して自転車も登山もお休みけれど、せっかくの美しい季節の週末だし…。そこで思いついたある春の週末1泊旅行。

GoldenPass Express の特等車で行く電車旅。

この列車が、ベルナーオーバーランドの真ん中のインターラーケン(Interlaken)から、セレブ山岳リゾートのグシュタード(Gstaad)を通って、スイスリヴィエラのモントルー(Montreux)まで115㎞の距離を3時間かけてのんびりと行く。

インターラーケンとモントルーは、地図で見るとそんなに遠くない。言ってみれば東京から熱海くらいの距離。それを、3時間?

しかも「エクスプレス」って名前…。

エクスプレスとは?

ちなみに特等車の名前は Prestige。

「ゴールデンパス」で「エクスプレス」で「プレステージ」。語彙がすべて前のめりである。

今日はそんな素敵なパノラマ観光列車についてレポートしたいと思う。

動くレジャーカタログ写真集

GoldenPass Express

列車はインターラーケン始発(または終点)だけれど、同じトゥーン湖畔の美しい町シュピーツにも停車する。そこで私たちはシュピーツからモントルー行の昼下がりの列車に乗車した。

プレステージクラスはといえば…。背中やら足、そして温度も調節できる革張りのシートで、電車の座席というより完全に鑑賞席。大きな窓もくもりが無く景色がくっきり。この窓も気合い(=特殊加工)の入ったガラスを使っているものと思われる。

インターラーケンから乗っていた英語圏カップルがハムの盛り合わせとワインでおしゃれにお食事中。

そして車窓からは、美しい景色の連続パノラマ。青々とした草地に牛の群れ、山小屋、そしてアルプスの山景色。

まだそんなに土地勘が無かったこともあり、「どこかよくわからないけれど、どの景色も美しい」といった状態。

飲み物片手に「今度あそこにゆっくり行ってみたいね」などと今後のレジャーの候補がどんどん増えていく。営業がなかなかうまい。

Chocolat chaud

精密メカニズムが支える列車

列車は途中のツヴァイジンメン(Zweisimmen)という駅で少し長めに停車する。

ここで、実はこのGoldenPass Express のご自慢が絶景だけではない点に注目したい。

この路線、このツヴァイジンメンを境に線路の幅やホームの高さが変わる。そのため昔からこの駅で乗換えが必要なのである。このGoldenPass Express 以外は…。

せっかく景色最高のエリアなのに乗換えは面倒。でも線路を替えるのは大変。何とか直通で行けないかなぁ…と長年(1世紀以上)考え抜いたスイス人。

…そうだ、車両のほうを改造してみる?

結果、2022年に実現したのがGoldenPass Express。車両の車輪の幅を自動で調節する技術を取り入れたのである。この仕組み自体は国をまたぐ大きな鉄道などで見られるようだが、ローカルな山で観光目的で実現させているのがさすがスイス。

車両の方をあわせて来るとは…。スイス人の山を登るための技術開発への執念の結晶と言えよう。

Zweisimmenで、列車を変形させて機関車(電源車?)も替えて出発するため、停車時間が少し長いのである。

なるほど、この区間を走る観光列車GoldenPassの中でも、そんな技術を駆使して乗換え無しでインターラーケンまで(から)直通で乗り入れる便が「エクスプレス」なのね。

なお、「エクスプレス」以外のGoldenPass観光列車やこの路線の普通の電車では相変わらずZweisimmenで乗り換えが必要とのこと。

こうして列車は山の中を再び進んでいく。

最後はコートダジュール風

Lac Léman

さて、トゥーン湖から始まる3時間の旅のしめくくりは、レマン湖。フランス語圏。光も雰囲気も変わり、斜面にぶどう畑も見えてどことなく漂う南仏感。「スイスのリヴィエラ」モントルーで旅は終る。神々しいアルプスの山を見せつけた後、趣きが異なる景色を入れて来るとはにくい演出である。

3時間で115km。スイスは山だから距離感がバグりがち。山を越えたり避けたり、2Dで考えてはいけない国土である。でも退屈しない3時間だった。移り変わる絶景とスイスの技術力を味わう、まさにスイスのプレゼン動画を巨大画面で見ている気分だった。

山登りはしたくない(できない)人にもスイスらしい山景色を届けてくれる列車とも言える。

復習用の絵はがきセット

車内でお土産に6枚入りの絵はがきセットをもらった。絶景を背景にした列車の写真。プレゼン動画にあわせて静止画カタログ配布とは抜かりない。

たしかに、車内からは絶景を背景に走る列車の姿は見れないもんね。

このMOB線(Montreux-Oberland Bernois Railway)、日本の南海鉄道と姉妹鉄道提携をしている。その関係で「世界遺産・高野山へは南海鉄道で」と書かれた車両を見かけることがある。逆に南海鉄道でもGoldenPass を模した車両が見られる模様。

インターラーケンとモントルーの間を本当にエクスプレスで行きたい場合は、違うコースだけれどSBB(CFF)の特急ならもっと早く到着できる。

ただし景色はここまで丁寧には見せてもらえない。

GoldenPass express carte

どっち向きに乗る?GoldenPass Express

GoldenPass Express は両方向から乗ることができる。どちらに進むのが良いか迷うところ。

レマン湖(モントルー)→ アルプス(インターラーケン/シュピーツ)だと、湖畔リゾートから徐々に山岳感が強まり、アルプスの中に到着するという冒険気分が高まる演出。おそらく、こちらが王道(?)。

アルプス(インターラーケン/シュピーツ)→ レマン湖(モントルー)だと、標高が下がっていき、景色が柔らかくなっていって、光が広がるきらきらしたレマン湖に到着というというロマンチックな演出。

どちらを選ぶかで旅のジャンルや気分が少し変わる気がする。

※地図はお土産のはがきセットにあったもの

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