フランス料理で高級食材とされているモリーユ茸 (Morilles)。高級レストランに行くと、モリーユが3切れほどすまし顔でお皿に載っていたりする。日本語では「アミガサ茸」といわれているこのキノコ。子供の頃、どこかで「アミガサ茸」を見てヒダヒダがキモい・・・と思ったので名前を覚えていたものの、このキモいヒダヒダキノコがすごくおいしいということは当時は想像もしていなかった。
さて、サヴォワ地方に住む近所の知り合いのキノコ名人親子がそんな高級キノコを裏山に採りに行くというので、便乗してみることに。キノコ名人と一緒でないと、山でキノコ狩りとか、ちょっと不安だし。
しかも、そこの息子は食材としてキノコは好きではないけれど、キノコ狩りは好きと言う、ありがたい存在です。しめしめ。
モリーユ茸のシーズンは4月から5月あたりで、シーズン初めの週末などは、産地はちょっとしたモリーユラッシュになるらしい。初めの頃は低地でも見つかるのが時期がたつにつれて徐々に山を上っていくことになる。日陰の茂みや木のそばにひょこっと生えていて、ひとつ見つかると周辺にいくつか見つかるのであさってみよう。
ところでモリーユがおいしいということを知っている今でもどうもあのヒダヒダがトラウマになっているため、おそるおそるモリーユを摘んでいたら、もちろんみんなにバカにされました。
いや、キノコは食べられるんだけど、生のキノコ全般を触るのが実はあまり好きではないのよ。だって、きもいじゃん。干しシイタケとかは全然大丈夫なんだけど、特にその辺の地面から生えてるきのこは全部毒きのこに見えるというか、私の中の何かが接触を拒否したがるのよね…。
もうね、あのカサの裏側のヒダヒダから粉(胞子)を発してまき散らすとか、想像したくないもんね笑。
下ごしらえ
モリーユは生食だと毒があります。
あら、見た目のヒダヒダが不気味なうえにアグレッシブなのね。きちんと加熱して食べましょう。
これって、初めて食べた人は生で食べて病気になったんだけど、それでも何となくおいしい気がしてどうしても食べたかったから火を通してみた…そしたら今度は大丈夫だった!しかも本当においしかった!とかそういうドラマがあったのかしらね?
このヒダヒダ、知らなかったら敢えて食べたいとか思わないけどな…しかも生って…。(←まだ言ってる)
不気味な見た目に攻撃的な性格ってのもどうかと思うけど、それをどうしても食べたいってほうもかなりの執念ね笑。
まあ、普段食べている食材一般の中にも、人類の執念を感じさせられる食品ってけっこうあるよね。「よく、その見た目のものを食べてみようと思ったよね…」とか、「毒物なのに命がけで工夫を施してまで食べたかったんだね」とかいうシリーズね。
あ、話がそれた。
いずれにしてもモリーユは生だと毒物なんだからおそるおそる触って当然でしょ? と、言い訳しつつ、まずたて半分に切ります。これは中に土が入っていたり虫がいたりするので、内部まできれいにするためです。
汚れを落としてから、お酢を少量混ぜた水に最低20分は漬け込み殺菌、洗浄を行います。Vinaigre Blancという透明のビネガーで、という説明を受けたのですが、なかったら米酢とかでも大丈夫かな?ただし、べつに酢の物にしたいわけじゃないので、きのこがビネガー風味にならないように要注意です。
調理の一例
あとはお好みの方法で調理すればよいのですが、シンプルかつ素材の味わいを楽しめる、代表的なレシピを以下ご紹介します。
最初にたて半分に切っていますが、それでも大きすぎる場合はさらに適当な大きさに切ってね。たまに巨大なモリーユもあります。
①モリーユ茸をバターで炒める。分量にもよるけど10分くらいかな?かなりの水分を含んでいるので、いずれにしても水分がなくなるまで。
②水分がなくなったら塩こしょうで味を調え、生クリームをからめる。
このレシピを最大限楽しめる生クリームの話もよろしくね(かなりローカルな話だけど)→ 今までにフランスで食べた最もおいしい生クリーム
レシピってほどのものでもないですが、モリーユ茸は生クリームと相性が良いので、これだけでもすごくおいしい。せっかくなので素材の味を楽しんでね。クリームを絡めずに塩コショウをふった段階で完成にしてもさらに素材の味をたのしめるよ。
毒キノコチェック
余談ですが、フランスの薬局では採ってきたきのこが安全なものかどうかチェックしてくれるらしい、という話を聞いたことがあったので、キノコ名人に真偽のほどを聞いてみたところ、「知識はあるはず」とのこと。でも薬局もそれなりに忙しそうですからね。さすがに我が家の自宅近くの薬局とかにキノコを持ち込んでも、やってくれないだろうな・・・。田舎のほうの暇そうな薬局なら大丈夫なのなのかしら?